父さん、母さんに会えましたか?

jyunbi
このお話は、電子出版社ハッカドロップス発行の電子書籍
「亡くなったあの人に伝えたい言葉」に掲載されたもののうちの1編です。
インターネットを通じて募集をかけ、全国から集まりました。
すでにこの世にいない方へのメッセージは、一方通行で返事がないものです。
しかし、文章にすることで、書いた人の心の整理や、明日への一歩につながると思います。
またこれらのエッセイを読ませていただきながら、自分も1日1日丁寧に誠実に生きていきたいと感じました。
あなたにとってこの本が何かのきっかけになることを願っています。

父さん、母さんに会えましたか?

不出来な娘

父さん、母さんに会えましたか?25年前に、すい臓がんで亡くなった母は、まだ死んでから一ヶ月ちょっとの父さんにとっては、あの世の大先輩ですね。
七歳年下の母さんの命があと一ヶ月だと知らされた時の父さんの衝撃は大きかった。絶対に年上の自分の方が、あの世には先に行くものだと固く信じていたから。
母さんの闘病中は、毎日病院へ行って無言で看病していた姿を思い出します。
そんなに仲が良いとも思えない夫婦だったけれど、父さんが母さんに向かって、いつも「我々が」と二人称で語る昔話耳にする度に、深い愛を感じました。
母さんは、小学校四年までしか学校に行っていない。その一方で、父さんは、旧制大学の出でした。(私が大学を出ていても、新制大学だと言っていましたね。旧制の大学出ということに誇りを感じていました。)
どうして、父さんは、母さんと結婚したのか、ずっと不思議に思っていました。
でも、それは、母さんの明るさに魅かれていたからのだと分かりました。
母さんが死ぬ一ヶ月前に、それまで気になっていた「何故、道南の森町がテレビで取り上げられると「懐かしい」と言うのか」を尋ねてみました。
母さんのきょうだいは、森町を懐かしがっているのを見たとこがなかつたからです。
すると母さんは、「一番上の姉が結婚して、子供が生まれて間もなくリウマチになった。誰かがその世話をしなきゃいけない。
子守りの人間も必要だった。だから、ばばちゃんが、「お前が行け」と言ったので、行ったんだよ」と答えました。
「えっ、そうなの。じゃ、森町には、いつからいつまでいたの?」と聞くと、「小学校四年から十九歳まで」いたというではありませんか。
私にとっては、大きな衝撃でした。
それまで、天真爛漫でのほほんと生きてきたと思っていた母さんにそんな過酷な体験が隠されていたとは思いもしませんでした。
もう少し早くその話しを聞きたかったです。
母さんの苦労もしらず、ただのちゃらんぽらんな母親だと思っていた不出来娘を許して下さい。
いつも自分のことよりも人のことばかり考えていた母さん。
今頃は、天国で何をしていますか。一ヶ月前、二十五年も遅れて天国に到着した父さんは、どうしていますか?二人仲良く生きていた時のように仲良く暮らしていますか。
父さんも、母さんに負けないくらいに努力した人でしたね。福島の寒村で、貧しくてきょうだいの多い兼業農家の長男として生まれて、農家を継いで欲しいと母親に頼まれたけれど、学問がしたいと福島の師範学校を受験して合格しました。
本当は、旧制中学に進学したかったけれど、家にはそれだけのお金がない。
だから、お金がかからないどころか給金も出る師範学校を受験して、見事、合格しました。村では数年に一人しか合格しない学校に合格して、成績表も役場に貼り出されて参ったと言っていましたね。
それとは別に高等小学校を出た後、すぐに「訓導」という小学生を教えることが出来る資格も取りました。
誠実で几帳面で努力家の父さんは、師範学校を出た後、東京の大学に進み、社会科の教員になりました。
大学も一年間は、父親の資金援助があったけれど、その後は、師範学校出の教員免許を活かして、埼玉県の飯能の中学校の教員として正式採用されました。
だから、大学二年生からは、勤労学生で、中学校から給料をもらいながら学生もしていました。
正式に働きながらの学校通いは大変で、授業の出席単位が少なくて、大学の事務から「日本育英会の奨学金を受け取っているのだから、もっときちんと大学の授業を受けなければ駄目だ」と言われたけれど、授業料を払うためには、働かないとやっていけないと嘆いていましたね。
少しくらいなら北海道に行くのも悪くない。そう思って、二・三年で福島に帰ろうと思ってやって来た北海道ですが、そうこうするうちに、本州での就職が難しくなって、結局、故郷に戻れないまま、北海道の土になってしまいました。
父さんの人生は、病気との闘いでしたね。五十九歳の狭心症、心筋梗塞、その当時は先駆的だった心臓バイパス手術。なかなか札幌医大病院に入院できませんでした。しかも、入院したのが内科で、なかなか外科に回してもらえません。
バイパス手術を受けて、早く職場復帰したいのに、ずっと待機させられて半年間も入院するはめになりました。その後も、やっと高校へ行けたと思ったら、入院の時のストレスが原因で虫垂炎を起こして、それが腹膜炎にまで発展して酷い目に遭いました。
母さんが亡くなった後に受けた胃がん検診で、バリウムが大腸の憩室に詰まり、そのために大腸カメラ検査をして、そこで横行結腸がんが分かりました。
早期がんとはいえ、少し進んでいたのでリンパ節転移の確率が5%あると言われて、すぐに開腹することに決めました。
その後の六ヶ月検診で、今度はS状結腸に悪性ポリープが見つかり、こちらの方は、内視鏡で取り除くことができました。
その後も病気のオンパレードでしたね。脊柱管狭窄症。その手術を受けようかどうか決断するために受けたレントゲン写真で、直径六センチの腹部大動脈瘤が映っていて、医者からは、「これは脊柱管狭窄症どころの騒ぎじゃないよ。この大きさの瘤は、いつ破裂してもおかしくない。すぐに破裂する前に予防の手術を受けなさい。さそうしなければ命はないよ」と言われて、がんと言われた時には受けなかった強いショックを受けました。
結局、それが認知症のきっかけとなったのだと私は思っています。
腹部大動脈瘤の手術を受けるために、心臓のカテーテル治療を受けていた病院に入院した時、せん妄状態になってしまいました。
十年にわたる認知症の発症です。私も、この十年間、父さんの認知症の介護に追われました。
頭脳明晰で文武両道で、真面目を絵に描いたような父さんが、認知症になるなんて皮肉なものです。でも、母さんが死んだ後、父さんは少し変でした。
だから、強いショックを受けた時は、もしかして…とは思っていました。医者の言葉は、真面目な父さんには大きな負担だったのでしょう。
認知症になってから、すぐに昼夜逆転の生活に私は翻弄されました。何とかして認知症の進行を遅らせたいと勉強もしました。
でも、動脈硬化のせいで右の腎臓の血管が詰まり、人工透析一歩手前までに腎臓の機能が低下してしまいました。肺水腫になり、地元の介護医療型入院施設に入院するために、初めて介護保険を使いました。
以前から、「俺は金は払っても介護保険は受けたくない」と言っていました。でも、四十五年間通っていた、その病院に入院するためには、介護保険の認定が必要だったのです。
だから、介護認定を受けました。「悪いところを切って、早く退院したい」と何度も言っていましたね。
私も在宅介護、在宅医療を受けたいと願っていたのですが、医者の許可が降りませんでした。
寝たきりになった場合、食べられなくなった場合、胃ろうをするのかどうか考え始めた矢先に、午前四時前に、一人で逝ってしまいました。
病院での午後五時から翌朝午前九時までの泊りの付き添い四ヶ月続けたけれど、私の体力も限界でした。私が付き添いをしなくなったら、あっという間に衰弱してしまいました。
もっと付き添いが続けられたら、もっと優しく介護してあけられたら、と父さんが死んでから残念に感じることがあります。それでは、また会う日まで!

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