商業出版の理想と現実

これから書く事が、全ての出版社、出版取次に当てはまる訳ではありません。
しかし出版不況と言われる現状において、全く間違ったことではないかと思われます。

本を出すことの意味

本を出したいと言われる方は大勢います。

・自分の考えや経験、やってきた事をまとめて、周りに伝えたい
・自分の作った物語をまとめて、周りに伝えたい

そんな想いから出版したいと考えるのでしょう。

出版の理想像

・自分の本を少しでも多くの人に読んで貰いたい
・自分の本を読んだ人が少しでも幸せになってほしい
・本を出した事で自分のファンを作りたい
・できればお金をかけずに出版したい
・願わくば、印税も欲しい

膨大な時間をかけて本を書くのだから、これぐらい願ってもバチは当たらないでしょう。
しかし出版というのは誰でもできる訳ではなく、特に紙の出版は大変なお金がかかるものだと言われています。
自費出版は150万円から1200万円と言われることもあるようです。
そんな状況なので、みなさん「商業出版」を狙います。
商業出版はお金がかからないと言われているからです。

商業出版の理想像

①商業出版社から本を出すのだから、文章校正、レイアウト、書店配布、宣伝広告まで出版社がやってくれる
②書店に並べば夢の印税生活
③本を読んだ人から、仕事のオファーがひっきりなしに来る
④2冊目、3冊目の出版オファーが立て続けにくる
⑤出版すると仕事に箔が着く

かつて、約15年前までぐらいは、確かにこの理想像どおりでした。
しかし、新聞報道などでもある通り、書籍売上は激減、書店の減少、出版取次の倒産という現状において、それは当てはまらなくなってきています。

商業出版の現実

①商業出版社から本を出すのだから、文章校正、レイアウト、書店配布、宣伝広告まで出版社がやってくれる→広告宣伝費(30万円~300万円)は著者負担を要求される事が多い。本の売れ行きは著者の人脈頼み
②書店に並べば夢の印税生活→初版3000部として印税は7%程度なので、せいぜい30万円程度
(本の定価1,500円×3,000×7%=315,000
③本を読んだ人から、仕事のオファーがひっきりなしに来る→書店に本が並ぶのは基本的に2週間程度。売れなければすぐに撤去の状態で、そんな上手い話はない
④2冊目、3冊目の出版オファーがある→初版3000部を売り切って、増刷にならない限りは難しい。
⑤出版すると仕事に箔が着く→周りは凄いと言ってくれるけど、読者が少ない為、仕事には繋がらない

商業出版のしくみ

これから本を出したい人に向けて、現在の出版業界について説明します。
この状況に必ず当てはまるわけではありませんが、概ねこのような感じだと聞いています。

<出版取次>

出版社から書籍取次に送られた本は、出版取次の采配で全国の書店に送られます。
驚いたことに、書店が注文したものだけが納品されるのではなく、注文していない本までも勝手に書店に送られるそうです。
逆に書店が注文している本は、なかなか入ってこないこともあるようです。
小さな書店はスペースに余裕がない為、書籍取次から勝手に送られてきた本は、そのまま取次に返品される事が多々あるそうです。
大手書店には今日入荷した新刊本が、地方書店だと明後日にしか入らないというタイムラグもあるそうです。
こんな状態なので、返品率が40%を超えるのでしょう。

<書店>

書店は、取次から書籍を買い取って店に並べている訳ではなく、委託販売の形式を取っています。
本が売れなかったら返品すればいいので、本の仕入れや、売れない本をどうやって売るかという努力が少なめだと言われることもあります。
しかし、出版業以外の業界だったら当たり前に通用する「バイヤーの勘」とか「店員の現場嗅覚」などを本の発注に生かすことができず、出版取次の都合で勝手に商品を送ってこられるので、書店員の方々がやる気をなくすのも分かる気がします。
いらない本を送ってこられて、欲しい本やお客様から取り寄せを依頼されている本が全然入ってこない状態なら、書店の客離れは仕方がないのかもしれません。
最近出版した著者は、facebookなどSNSを活用して本の宣伝をしますが、みなさん口を揃えて「Amazonで買ってください!」と言います。
在庫の有無が一目で分かるAmazonが楽だからです。
商業出版された本は、書店に並んでから2週間(初速)の売れ行きが悪ければ、出版取次に返送され、出版取次が出版社ごとにまとめて出版社に返送します。
「商業出版してブランディング」と言われますが、書籍が2週間書店に並んだからといってブランディングができる訳もありません。

<オンライン書店>

「書店がダメでも、Amazonが売ってくれるじゃないか」と思われるかもしれませんが、値引き販売が原則のアマゾンは、再販制度に縛られて値引きできない紙の本は売りたがりません。
数年前は、「Amazonの売上げの3割は書籍以外の売上げ」と言われていましたが、今は3割が書籍の売上げではないかと予想されます。
いまや何でも売っているAmazonは、別に紙の本を売らなくても十分にやっていけるのです。
とある出版社の方は、「Amazonで新刊を販売してもらおうと書籍情報を登録しているけど、Amazonは登録が遅すぎる!」と激怒されていました。
Amazonが一番売ってくれるけど、Amazonは売りたがらない。そんな状況のようです。

<出版社>

出版社は、新刊本を書籍取次に納品したときにお金をもらいます。
そこから返品があると、返品された分のお金を返さなければいけません。
出版社は出版取次にお金を払いたくないから、新しい本を出し続けます。相殺できるからです。
出版が自転車操業と言われる所以です。
1人の著者で執筆できる量は限られているので、新しい著者を増やして新刊をどんどん刷り続けなければいけません。
あちこちに声を掛けて、その中で1人でもメガヒットが出れば御の字です。
出版社は返品された本を長い期間倉庫にしまっておくと資産計上しなければいけなくなるので、しばらくすると裁断、廃棄されます。

<著者>

上記の事情から、あまり有名でない方にもお声が掛かるようになりました。
商業出版の裏事情も知らず、出版社からオファーがあって、著者は大喜び!
上下関係が生まれてしまうので、印税や広告宣伝費負担などお金の話は、著者から出版社には切り出せません。
悪質な出版社は、本が出来上がる間際になってから契約の話をするそうです。
その段階で、印税7%、著書の大量買い取り要請、広告宣伝費著者負担を言われても、従うしかありません。
「本が出版される最初の2週間が勝負。その為に新聞広告打って」と言われたら、やってしまいますよね。
次はないのですから。
かつて本の初版は20000部が当たり前でしたが、今や3000部。それすらも再版は厳しい時代です。

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