電子書籍出版の歴史

電子書籍出版の歴史

電子書籍元年と言われた2010年から今日までの電子書籍の歴史です。電子書籍の作り方を模索していたこの4年間にイチ業者として調べたこと、感じたことが書いてあります。
年度に食い違いがあるかもしれません。また、どこかの団体や業者さんの批判になってしまうかもしれません。
他意はありませんのでご了承ください。

2010年

2010年はアメリカを始め先進国で展開されはじめた電子書籍化の波が日本にも到来しました。いわゆる電子書籍元年と言われた年です。

インターネットの検索最大手であるGoogleが、日本で販売されている書籍を勝手にスキャニングしてインターネット上で公開を始めた事から、日本の大手出版社31社が「日本電子書籍出版社協会」という団体を作り、また大日本印刷、凸版印刷他が発起人となった「電子出版製作、流通協議会」が発足し、Googleに対抗しました。

この頃に現在の電子書籍の主流である「epub(イーパブ)」という形式が発表ました。epubはテキストデータである為に容量が軽くて加工もしやすい為にこの頃から有望視されていたのですが、東京国際ブックフェアなどで紹介されたepub電子書籍作成ソフトが100万円以上するなど非常に高価だった為に、一般に流通はしていませんでした。

epubの他、シャープは独自のXMDFという形式の電子書籍を作成しGARAPAGOSという電子書籍が読めるタブレットを発売するなど、日本の各団体が独自の形状の電子書籍フォーマットを開発し、それで作った電子書籍を販売。昔あったビデオテープのVHS×ベータ問題ではないですが、一利用者としては使い勝手の悪い状況になっていました。

この頃、ipadが発売され、作家の村上龍氏が「歌うクジラ」というiPadなどで読めるマルチメディアな電子書籍を出版してたいそう話題になりましたが、これも制作費のみで150万円程かかっていたそうです。

電子書籍は大手商業出版社のみが製作できる高嶺の花でした。

2011年

この頃、一般人が作れる電子書籍はPDFしかありませんでした。

PDFは汎用性が高く、パソコンや一部のタブレットでも読むことができます。
InDesignで作ったデータを簡単にPDFにすることもできます。ただ、底本をスキャニングして電子書籍化する場合、ページ数が多いとかなりのデータ量になってしまうのが悩みどころでした。
パソコンはともかくタブレットで読む場合は通信費やダウンロード時間の問題があったからです。

epub型電子書籍の製作ソフトとして Adobe InDesign CS5.5が発表されましたが、横書き文章しか書き出しできず、ビジネス書ならともかく横書きの小説に違和感を感じる人も多かったと思います。
世界中で文章を縦書きにする国は案外少ない為、日本向け対応が後手に回るのは仕方ないと思いました。

またepub型電子書籍を作っても電子書籍リーダーが対応していないなどの問題から普及するには時間がかかると思われました。

2012年

2012年7月、Amazonの電子書籍リーダーkindleの日本版発売が噂される中、楽天kobo touchという電子書籍リーダーが楽天より発売になりました。
楽天kobo touchは作りが簡単でPDFも読めた為に、市販の本をスキャンしてデータ化するいわゆる「自炊」が流行りました。
ただ、楽天kobo自体の販売する本の数が少なく、楽天のインターネットモール大手らしい「お客さんもインターネットぐらい出来て当然」という姿勢から説明不足が目立ち、楽天kobo touchを購入してもマニュアルがないし使い方が分からないというユーザーが続出して大問題になりました。

12月、Amazonよりkindleが日本で発売になりました。これに伴い、キンドルダイレクトパブリッシングというサービスが開始されました。
電子書籍版の自費出版ができるというものです。マイクロソフトのWORDなど身近なソフトで文章を書いてSigil(シジル)という無料のソフトで電子書籍化できたので、怪しいネットビジネス業者が「無料で電子書籍が作れる!いまアマゾンに電子書籍を出せば先行者利益でがっぽり儲かる!」とばかりに高額な電子出版ノウハウ商材を売りつけていました。
ただAmazonは大手出版社の電子書籍もたくさん売っているし読者の目も肥えているので、慌てて書いたような電子書籍が先行者利益で売れる訳もなく、その手の業者は現在ことごとく潰れています。

この頃のepubのバージョンは2.0。sigilで書き出した電子書籍は縦書き表示されませんでした。縦書きにこだわるのであれば、PDFしかないという状況は続いていました。

2013年~2014年

epub3.0が主流になりました。縦書き日本語の文章が電子書籍で読めるという良い時代になってきました。
無料ソフトSigilが開発をストップした為にepub3.0の対応がされず、epub2.0の電子書籍しか作れないSigil頼みの電子出版社は消えていきました。

Amazonのキンドルストアが台頭し、あまりぱっとしなかったGoogleの電子書籍販売サイトGoogle booksがGoogleのアプリ販売サイトGoogle playと一緒になって、扱い安くなりました。

また、非難の的だった楽天koboも方針を改め地味に売上げを伸ばしています。
さらに、ipadやiphoneなどの熱狂的な信者を持つMac(i tune)が電子書籍販売を始めて電子書籍販売では世界2番目になっています。

Amazon、楽天kobo(カナダのkobo社)、Google、Macは全て母体が海外である為、世界中に販売網を持っており、海外で日本語の電子書籍も少なからず売れているようです。
さらにこれら4社は、独自の電子書籍リーダーを買わなくても無料配布されるアプリを自分のスマートフォンやタブレットにインストールすれば電子書籍が読めることから、ユーザーが爆発的に増えています。

epub電子書籍の特徴の1つである文字の拡大縮小自由自在なリフロー型電子書籍は、高齢者や目の不自由な方など細かい字を読むのが厳しい世代にも受け入れられています。

Googleは検索最大手の強みを生かして、登録した電子書籍が高確率で検索にヒットすることから宣伝には大いに役立っています。
また早くからepubの将来性に目をつけていたので、PDFと同時にepub型電子書籍も販売できるようになっています。逆に日本の大手出版社が独自社で独自に展開する電子書籍販売サイトは利用者が減って閉鎖が始まっています。
淘汰が始まっていると言っていいでしょう。

Amazonを除く上記3社はそれぞれ日本語のEpub3.0データでの電子自費出版を受け入れています。ただしepubバリデータというチェックサイトを通過したepub3.0データでないと販売できなくなっています。
世界中に売ってくれる代わりに粗悪品は売らないという基準があるようです。

現在日本で発売されているInDesignの最新版などepub3.0作成ソフトから書き出しただけのepub3.0データではepubバリデータでエラーが出るので一手間かける必要があります。
epubはXHTMLとCSSで構成されたホームページのようなものなので、ソフトで書き出した後で構文を開いてエラー箇所を書き換えなければならないのです。

また、Amazonはじめ母体が海外である為に電子書籍の販売登録がほぼ英語、電子書籍が売れた際の免税手続き、日本の銀行口座に入金があった時の受取手数料の中間マージン問題など細かな問題は多々あります。

自費出版本を電子書籍にするという手段によって、これまで日本の一部書店にしか配本できなかった自費出版本が世界中の電子書店に同時に配本できる、データ販売なので在庫数を気にしなくていい、大手商業出版社の電子書籍と同じように本が並ぶ、文字の拡大縮小が自由なリフロー型電子書籍は高齢者にも受けが良い、というメリットが生まれました。

また実際に電子自費出版した本が大手商業出版社の目にとまってメジャーデビューしたという話も聞きます。出版社(会社)の規模や印刷部数に関係なく、お客様には「あなたの本が世界中の電子書店に並びます」と言えるようになりました。

2015年

大手出版取次である栗田出版販売の倒産による書店閉鎖が発生するようになりました。
「出版不況」という言葉がインターネット上や雑誌などでよく見かけるようになりました。
電子書籍市場は右肩上がりで拡大を続けています。
過去に絶版になった本の電子書籍化が多かった年だと思いました。
2015年の中盤から、出版市場調査などの数字が表にでなくなったと感じています。

雑誌の廃刊も目立ちました。

2016年

大手出版取次の太洋社の倒産がありました。太洋社はマンガ・コミックス系に強かった為、売れ筋のコミックスが一切入荷しなくなって倒産する書店が相次いでいます。
弊社にお問合せをしてくださる人が口々に「出版するなら電子書籍にしろと周りから言われた」と仰るようになりました。
電子書籍出版しかしない著者もどんどん増えています。

電子書籍市場シェアを見ると、LINEマンガはさすがに強いと思いますが、Amazonの強さが目立ちます。
盛大な値引き合戦でAmazonと闘ってきた楽天koboは、電子書籍リーダーアプリの開発を止めるなど、力を入れていないように感じます。